三人は長い時間をかけて犯人を突き止めようとしたが、全ての謎を解き明かすことができなかった。
子牛を殺したのは誰なのか。その頭はどこにあるのか。
共に埋葬したはずの裁縫道具がハリエットの家にあったのはなぜなのか。
どうやって小屋に火をつけたのか。
遺体の首はどこへ消えたのか。
遺体は一体誰なのか。
「そして……私がハリエットの家あたりで見た人影は誰だったのか……」
ロードリックが呟く。
「もう一度聞きますが、二人とも、ハリエットの家には行っていないのですね?」
「ああ、神に誓って」とレイモンド。
モーガンも頭が取れてしまうのではないかと思うほど必死に頷く。
「それでは……ここにいる三人以外の誰かがこの村に存在する、ということになるでしょうね」
「や、やめてよ。怖いこと言わないで」
モーガンが身震いするが、レイモンドは冷静にロードリックに賛同した。
「たしかにそれ以外考えられないな。
そこで俺から提案なんだが、この議論を終わらすのは、
ハリエットの家に行って人影の正体を確かめてからでもいいんじゃないか。
俺はもちろん犯人じゃないし、正直なところ、二人が犯人なんてもっと考えられない」
三人が真実を見極めるべくハリエットの家へ入ると、そこには誰もいなかった。
しかし、火事の直前にロードリックが見た景色と違い、窓は大きく開け放され、カーテンがはためいていた。
ロードリックはそれを不審に思い、慎重に窓へ近づいていく。
その時、一際強い風が吹いて、カーテンがめくれ上がった。
「ロ、ロードリック! 危ない、何かいる!」
モーガンが叫ぶが、ロードリックは大丈夫だと言うように手をひらひらと振った。
窓際の小さな机の上で、小さなもぞもぞ動く生物が布にくるまっている。
その小さな手は紙の切れ端をしっかりと握っている。
ロードリックがそれに手を伸ばすと、小さな生き物は火がついたように泣き出した。