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「リンダ、正直に言え。お前は人を殺したのか?」

ルイスがリンダに聞くと、リンダは火がついたように泣き出した。

「リンダが、しました」

議論は尽くされた。
頭ではわかっていたことだが、いざ頷く幼いリンダを目にすると、信じたくない。

「お腹が空いてたの。
悪い人だから食べていいよって神様に言われたのかなって思った」
リンダは俯いていたが、一瞬、フィルの方を見てから続けた。
「それに、今日ケイトが言ってた──人狼は人を食べないと死んじゃうんだって」

「あ……」
フィルは突然、この殺人がなんのために行われたのか悟った。
これは生きるための殺人だ。
生きるために避けて通れない、幸せでいるためにはだれかが背負わなければならない罪。
人間が牛や羊を食べるのとなんら変わらない、食物連鎖の一端。

「父さん、母さん、教えて……これがどうして悪いことになる?
僕たちは生きるために人間を食べる、それだけなんだ。
リンダは生きるために、僕たちを生かすために人を殺したんだ!
なにも悪いことなんてないよ! 僕たちは悪くないよ!」

フィルは思わず席を立って怒鳴っていた。
リンダが兄の怒鳴り声に驚いたのかピタリと泣き止み、家は静寂に包まれる。
フィルの幼い主張に誰も答えるものはなかった。
代わりに家の玄関をノックする音が響いた。

「お前たちは裏口から逃げなさい。父さんが彼らと話しておくから」

ルイスの静かな一言に、アンジェリーナは素早く立ち上がって、兄妹の手を引く。
幼い兄妹は何が起こっているのかはわからない。
しかし、いつも優しい両親の顔は、窓から見えるおびただしいカンテラの明かりの数に張り詰めている。
​それらは徐々に増えていき、今にもこの家を取り囲もうとしているところだった。

「待って、説明して。どうしたの、なんで逃げるの」
フィルの問いに、今度こそルイスは答えた。
​「ここでは、俺たちが悪だからだ」
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