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16:00

あたしが小屋の中を掃除して、

気絶したままのアシュリーはレイモンドに小屋の中に運ばれて、

小屋のドアにはロードリックが鍵をかけた。

ロードリックはアシュリーが起きるまで小屋の外にいるって言うから、

レイモンドとあたしでハリエットを共同墓地に埋めに行った。

レイモンドが可哀想だった。

幼馴染みのあたしがどうにかしてあげないと!って思ったけど、

ずっと傍にいてあげることしかできなかった。

 

17:00

共同墓地にロードリックが来て、「アシュリーが目を覚ましましたよ」って言った。

レイモンドが一人で小屋に行った。

あたしも一緒に行こうとしたけど、ロードリックに止められた。

そっか、そうだよね。自分の奥さんだもんね、あたしはお邪魔だな。

仕方ないから、牛小屋に行って、子牛の面倒を見ることにした。

子牛と母牛を見てたら、すっごく悲しくなった。

アシュリーが処刑されたら、赤ちゃんはどうなるんだろう。

アシュリーは、ロードリックが村の外から連れてきた子だったから、

村人として暮らし始めた当初は、みんなに嫌われてた。

あたしもちょっと怖かったけど、それをかき消しちゃうくらいアシュリーはいい子で、

だからレイモンドは幼馴染のあたしじゃなくてあの子を選んだ。

アシュリーがこの村でたくさん努力した結晶である赤ちゃんも殺されちゃうなんて、すごく悲しい。

アシュリーもお腹を幸せそうに撫でて、

​「何があってもこの子を守るわ。私たちの宝物よ」なんて言ってたのに……。

そういえば、どうしてロードリックはアシュリーをこの村に連れてきたんだろう。

この村では、外の人は人狼かもしれないからって絶対に村に入れない約束なのに。

それに、あの指は……。

村を出て行く前のロードリックはあんまり手先が器用じゃなかった。

だから、「きっと繊細な作業をするような工場じゃ働けないな」って笑ってた。

どうやって働くって言ってたかな、たしか……土木工事とか?

ロードリックはなんだか変わったみたい。まるで別人みたいだな。

 

18:00

ロードリックの家にレイモンドが入っていくのが見えた。

何してるんだろう、って思ったけど、アシュリーに会うなら今かな、って思って、

牛小屋からアシュリーのいる小屋に行った。

最初はドア越しに子牛が可愛いとか、他愛のない話をした。

だって何を言うべきか、わかんなかった。

しばらくしてアシュリーは突然、「ねえ、ハリエットは……どうしたの」って聞いてきた。

まだ記憶が混乱してるのかも。

あたしは死んだとは言えなくて、「共同墓地にいるよ」って答えた。

 

19:00

無性に広いところに行って駆け回りたかった。

大声で泣いても誰にも怒られないところを探して、あたしはふわふわ山まで来てしまった。

もうどうしたらいいかわかんない。

牛小屋から、あたしの気持ちに呼応するように、悲痛な鳴き声が一度だけ聞こえた。

何かあったのか心配になったけど、確認しにいく気力が起きなかった。

 

20:00

突然、空の片隅がオレンジの光を含んで、あたしはびっくりして跳ね起きた。

アシュリーのいる小屋が火事だった。いきなり激しく燃えだしたみたい。

ふわふわ山を駆け下りる途中、

ロードリックの家からレイモンドが飛び出して、何かにつまずきそうになったのが見えた。

小屋へ向かう途中、牛小屋に寄ってみたら、信じられないことになってた。

子牛がバラバラ死体になってた。ひどい。ひどすぎるよ。

人狼が食べたのかと思ったけど、

それならどうしてお肉がたっぷりついた成牛の方を狙わなかったのかな。

それに、子牛の頭が見当たんないのはなんで?

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