16:00
アシュリーのいる小屋へ鍵をかけ、その鍵を私のポケットにしまいました。
どうしてもアシュリーと話さなければならないので、私は小屋の前に残りました。
しばらくすると、小屋の中からアシュリーの悲鳴が聞こえてきました。
おそらく、目が覚めて、自分の犯した罪に気づいたのでしょう。
私は努めて冷静に「アシュリー、気分はどうですか」と声をかけました。
「そ、村長。私、私、本能に抗えなくて、
咄嗟に自分のふとももを引っ掻いて正気に戻ろうとしたけど、ハリエットは……」
アシュリーは絶望と恐怖に塗れた声色で言いました。
やはり、アシュリーは人を喰わないという誓いを破ってしまったのです。
私はハリエットが死んでしまったこと、
アシュリーが疑われているが処刑は先延ばしにされていることなどを伝えました。
「ごめんなさい。村長が人狼である私を庇って村に入れてくれたとき、私、誓ったのに」
「迫害されて村を追い出され、飢え死にそうだったあなたを拾ったのは私です。
こうなった責任は私にもあります」
アシュリーは遠吠えのような声をあげて泣きました。
17:00
共同墓地に行って、レイモンドとモーガンにアシュリーが目覚めたことを知らせました。
レイモンドが小屋へ向かい、モーガンもそれに続こうとしましたが、止めさせました。
夫婦水入らずで話をさせてあげた方が良いでしょう。
そう言うと、モーガンは納得したようでしたが、とても悲しそうで、そのままどこかへ行ってしまいました。
私は家に帰って、人狼について書物を調べることにしました。
すると、気になる記述を見つけました。
・妊娠している人狼は、人間と同じように通常以上の栄養分を欲する。
その間の活動は番である人狼が担うことが多いが、
番が必要な分の肉を用意できない場合などには、自ら人間を襲うこともある。
人狼にも母性本能があると見え、子供のために凶暴化することがある。
18:00
レイモンドが訪ねてきて、「人狼について調べてもいいか」と言いました。
アシュリーを想ってのことでしょう、私には反対する理由なんてありませんから、
レイモンドを家に入れて、自由に書物を読ませました。
私は記述に関して調べたいことがあったので、記述のあるページを持って、ハリエットの家へ向かいました。
ハリエットの家には、アシュリーのために作ったスープが少し残っていました。
肉類は入っておらず、野菜がたっぷり入ったスープでした。
人狼として意見するなら、美味しくなさそうです。
19:00
現場検証の真似事をするため、アシュリーの家に向かう途中、木が折れる音が聞こえました。
この強い風でどこかの木が折れてしまったのでしょうか?
さすがにそこまでの風ではないはずですが。
アシュリーの家に着き、昼間の惨劇を独り、思い出しました。
野菜だけでは栄養が足りず、本能的にハリエットを襲ってしまったと考えれば辻褄が合います。
残念ながら、アシュリーは本当に罪を犯してしまったのでしょう。
一人物思いに耽っていると、ハリエットの家近くに人影を見たような気がしました。
急いでハリエットの家に向かってみましたが、近くには誰もいません。
慎重に家の中へ入ろうとしたら、何かにつまずいてしまいました。
私の足に血に濡れた裁縫針のついた糸が絡まっていました。
20:00
私が家の中まで入って怪しい人物について突き止めようとしたときに、
アシュリーのいる小屋からいきなり火の手があがりました。
私は驚いて、不審者についてはそれ以上調べずに、小屋へ走り出しました。