三年前のことを覚えていますか。
あの哀れな子どもが行方不明になったあの日のことです。
ああ、怯えないで。
あなたの罪はまだ誰にも知られていません。
しかし、あなたが恐れていることが起きるのも時間の問題でしょう。
このカードの裏に書かれている日付と場所をご覧ください。
お会いできるのを楽しみにしています。
puppet player
息が止まるかと思った。
もうあんな事件のことなんて誰も覚えてないと思ってた。
覚えてる人がいても、僕のことは、バレないに決まってるけど、もし、誰かが僕を目撃してて、三年かけて証拠を集めたとしたら…。
僕は怖くなった。
今更罪を償わされるなんてイヤだ。
第一、僕は本当は悪くないんだ。ああするしかなかったんだから。
悪いのはあの時も、今回も、このふざけた「puppet player」なんだ。
偉そうに僕たちに指図して、楽しんでる。僕らを、ゲームのキャラかなにかと勘違いしてる。
【集合した時の記憶】
あれ、と思った。
あの人……一番はじめに椅子に座ってるあの人。
どこかで見たことがあるけど、思い出せない。
【三年前の記憶】
いつも通り帰ろうとしたら、下駄箱にメモが入ってた。
「職員室のデータベースに不正アクセスしたこと、先生たちは誰も気づいてないみたい。
でも、私は知ってたよ」
息が止まるかと思った。
僕の目指す大学の推薦を勝ち取るにはこうするしかなかった。
意味もないのにそのメモを書いた人に心の中で言い訳をする。
だって、あと評点が0.1あればいいだけで、いいだろ、それくらい書き換えたって。
メモには続きがあった。
「私が先生に言っちゃおうかな」
冷や汗が出る。でも、読み進める。
「お願いがあるんだ。
一人子供を裏山まで連れてきて。連れてくるだけでいいよ」
他に選択肢はなかった。
僕は連れて行く子供をちょうどうちの学校に練習試合をしにきたサッカーチームから選ぶことにした。
「ごめんなさい、俺、すぐ帰んなきゃいけないんです」
一人だったので話しかけてみた小学生らしい彼はそう言って僕についてこようとしなかったけど、足首のミサンガを褒めたら、「姉ちゃんが無理やり結んだ」とかなんとか、照れながら言っていたから、チャンスだと思って、「そのお姉ちゃんのお使いなんだ」って言った。
でも、わかる。僕も姉ちゃんがいることが恥ずかしかった時期があった。
姉ちゃんが校門で僕のことを待っているのとか、もう最悪。同い年の子たちにシスコンってからかわれる。
でも、本当に姉ちゃんが嫌いかって聞かれると、うーん、どうだろ。
殺されたら敵討ちぐらいはしてやろうかな。
あの子は簡単に信じた。シスコンっぽい。
そこからはトントン拍子だった。
男の子の姉の話をしながら、僕の学校の裏山に連れて行く。
話を途切れさせないのが大変だった。僕がパソコンが得意だと言ったら、男の子はなんだか興奮して小学生らしいあだ名で僕を呼んだ。僕も男の子をあだ名で呼んでやった。
鍵のかかった立ち入り禁止区域の扉の手前まで来て、僕は男の子を置き去りにする口実を考えていなかったことに気づいたけど、「お姉ちゃんまだいないっぽいから、ちょっと探してくる」と言ったらまた簡単に信じた。あの子、絶対シスコンだった。
本当は禁止区域の先まで連れて行った方が良かったのかもしれないし、〇〇高校の生徒ならその鍵は簡単に借りれるんだけど、もしそのせいでバレたらって考えたら先生に申請する気にはならなかった。
裏山まで連れてくるだけでいいんなら別にいいだろ。
僕はそのまま男の子を裏山に置き去りにして帰った。
次の日、新聞の地方欄に男の子が行方不明だという記事が載った。
【目標】
投票数が最多にならない。(3)
犯人に投票する。(5)