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三年前のことを覚えていますか。あの哀れな子どもが行方不明になったあの日のことです。

ああ、怯えないで。

あなたの罪はまだ誰にも知られていません。

しかし、あなたが恐れていることが起きるのも時間の問題でしょう。

このカードの裏に書かれている日付と場所をご覧ください。

お会いできるのを楽しみにしています。

                                     puppet player

まじ無理。

手紙の上に私の血がポタポタ落ちてく。

カッターの刃の冷たい感触が腕を横切ると同時に、血の吹き出す熱い感覚。

痛いのもあるけど、それだけじゃないなんか変な感じ。でも、これが癖になる。

あーあ、なんでこんなことになっちゃったんだろ。

つーか、あんな気持ち悪いもの思い出させんじゃねえよ。

あああああああああああああ、行きたくない。生きたくない。

でも、行かなきゃ、きっと警察に言われるし。

なんであんなののせいで人生狂わせられなきゃいけねえんだよ。死ねよ。

 

【集合した時の記憶】

あーあ、もうほんと、やってらんない。なんでこんなところに知り合いがいるわけ?

まじで最悪なんですけど。

 

【三年前の記憶】

教室では誰も私に注目しない。

嫌われてるやつが脱ぼっちを狙って私の周りにまとわりついてくるのを除けば、私に話しかけてくる人はゼロ。

別に嫌われてるわけじゃないけど、多分、話しかけにくいんだと思う。

明るい髪色が教室を埋めるのに、その片隅に黒い花を咲かせるのが私。

きっと陰キャとか、地味、ダサい、って言われてる。

この黒髪がどれほどの価値を持ってるかあいつらはきっとわかんないんだ。

陽キャ気取りの奴らが本当の私を見たらびっくりするに決まってる。

フォロワー5000人越えの界隈では有名人なんだから。

白い肌と赤い血、光を飲み込んでしまうような瞳。俗世から私を隔てるカーテンのようなこの長い黒髪。

この価値がわからないやつは死ね。少なくとも私の味方じゃない。

私の黒髪を褒めてくれるフォロワーは意外と少なかったから、「綺麗な髪の毛だね」とメッセージが届いた時、私は思わず返信してしまった。

「ありがと! 私も自分の髪の毛だけは好き」

「きっとみんなに褒められているんだね」

「ううん、全然。学校ではまとめてるし、みんなあんまりわからないと思う」

「でもきっとみんな価値をわかってくれるはずだよ」

「無理無理。あいつら染めた方が可愛いとしか思ってないんだから」

​「そうじゃないでしょ。こんな病み垢持ってるなんて、バレたくないだけでしょ」

髪の毛を褒めてくれたフォロワーがいきなり厳しい口調に変わった。

私は怖いと思うより、私のことを知ったかぶりするその態度にいらだった。

「私の何を知ってるわけ? フォロワーってだけで私のことを知ったようなこと言わないでくれる?」

フォロワーは言った。

「なんでも知ってるよ」

私は怖くなって返信できなくなった。スマホの上を震えた指がさまよった。

「××高校2年A組 、友愛さん。

お願いがあるんだけど、もし断れば、このアカウントのことをバラすからね」

私に選択肢はなかった。このアカウントは私の居場所。もう何も失いたくない。

「〇〇高校の裏山に16:45に来て。

そこに死体があるから、服とかアクセサリーを全部脱がせて。

そしてそれを持ち帰って、燃やしてほしい」

やるって決めたはいいけど、疑問はたくさん残る。

私は半ばやけくそになってフォロワーとやりとりをした。

「死体? どうしてそんなものがあるの」

「知ってどうするの」

「だって事件に関与しなきゃいけないんでしょ?最低限知る権利があると思う」

「知ってもなににもならないよ。友愛さんは言われたことをするだけでいいの。あとは……」

フォロワーは1つのメッセージを送ってきたけど、すぐに消した。

多分それは「他の3人がうまくやる」だったと思う。

翌日、私はあのフォロワーの指示通りに、〇〇高校の裏山に行った。

指定された時間にたどり着くと、人が一人倒れているのが見えた。

事前に話は聞いていたから、驚かなかったけど、その場で吐いてしまった。

それくらい、酷かった。男の子だったと思う。

日に焼けた手足が無造作に投げ出されていて、サッカーユニフォームに血とか吐瀉物とかがべったりついてた。

最悪、キモい、汚い、死ね死ね死ね。

誰に向かってでもなく呪いを吐きながら、私は男の子の衣服を脱がせ始めた。

私はそのメッセージ通りにした。下着を含めて、ユニフォーム、ズボン、靴下、靴を脱がせた。

その子の元々の肌の色白さに驚いた。女の子みたいなサラサラの白い肌だった。

あの子はサッカーなんてやめた方が綺麗になれると思う。

足にミサンガがついていたけど、ハサミを持ってなかったから、そのままにした。

服とか体に触るのはめっちゃキモかったけど、私はどうにかやりきった。

 

次の日。

アカウントのフォロワーが一気に28人増えた。

28人……つまり、私のクラスの人数より二人分、少ない数。

 

【目標】

投票数が最多にならない。(3)

犯人に投票する。(5)

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