13:00
出産も近くなってきたからか、最近、アシュリーは一日をほぼベッドで過ごしている。
傍にいてやるべきなんだろうけど、
モーガンがアシュリーの面倒を見てくれるからほぼ任せてる。
昼飯は毎日モーガンが美味しい肉料理を持っていってくれているらしい。
妊娠すると無性に肉が食べたくなるってアシュリーも言ってたから、ありがたいことだ。
ロードリックが出稼ぎのために村を出たときにくれた大きな壁掛け時計を見ると、
もう牛小屋へ出かける時間だった。
「行ってきます」俺が言うと、アシュリーもベッドの中から「気をつけてね」と見送ってくれた。
13:30
牛小屋で働いていたら、村長が俺を尋ねてきた。
俺を探して家まで行ったらしいが、
アシュリーに俺がここにいることを教えてもらったらしい。
「最近、山の羊が襲われたり食い殺されたりしている件について、お聞きしたいのですが」
村長はそう切り出した。
俺も何か策を講じなきゃいけないなとは思っていたから、
産気づいた牛の世話をモーガンに任せて村長の家で話すことにした。
ただ、そうすると、モーガンがアシュリーの昼飯を用意できなくなるから、
村長の家に行く前に、ハリエットの家に行って、代わりにやってくれないか頼むことにした。
14:00
ハリエットの家につくと、ハリエットは中で羊の毛の加工作業をしていた。
アシュリーの昼飯役を臨時にやってくれないか、と頼むと、
ハリエットは髪の毛についた羊の毛を払い落としながら「いいわよ」と言った。
「あいにく、野菜しかないんだけどね」
ハリエットは体力がつきそうな食材をかき集めて手早くスープを作り、
ついでに俺と村長がハリエットの家でそのまま話せるようにお茶も用意してくれた。
俺たちは好意に甘えることにし、ハリエットが出て行くのを見送った。
村長と俺はそのままハリエットの家で話し込んだ。
半年くらい前から山の羊たちが襲われてるのは、平和なこの村では大事件だった。
最初は森に少数ではあるが生息している肉食動物のせいかと思ってたけど、
今考えると、この一連の事件は人狼が現れる予兆だったのかもしれない。
14:30
村長との話が終わった後、俺はハリエットの家を出て、ふわふわ山へ向かった。
今日はなんの被害もないみたいだ。
モーガンに牛を任せたまま来たけど、
牛小屋からなら俺がここにいることがわかるだろうな。
あそこは高台にあるから、村全体を見渡すことができる。
牛の世話をしながら、村を眺めるのは気持ちいいんだよな。
15:00
アシュリーのいる自宅へ帰った。
「ただいまー!」と間延びした声で玄関を開けたあの時の俺が憎らしい。
家に入ると、そこには、
キッチン近くで倒れているハリエットと、
ベッドに倒れこむようにして気絶しているアシュリーの姿があった。