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​終幕「小刀」

「丑之助さんが犯人なのね?」

ヨシが丑之助に問う。

「違う。俺は、そこの『夜蜘蛛』を斬るために来た役人だぞ、どうして主人を殺す必要がある?」

「でも、丑之助さん以外に考えられませんわ」

無実を訴える丑之助を横目に、三人は、ここで丑之助を処刑することに決めた。

役人を呼んで都の裁判所まで連れて行くには、あまりに逃亡されるリスクが大きいからだ。

ヨシが処刑係に名乗り出て、どこから取り出したのか、立派な得物を丑之助に突きつける。

しかし、処刑される直前、丑之助が抜刀し、音太郎に向かって吠えた。

「俺は『夜蜘蛛』を始末するまでは死なん!」

ヨシが丑之助の首をはねるのと、丑之助の刀が柔らかな肉に深々と突き刺さったのはどちらが早かっただろうか。

音太郎が気づくと、目の前にはハツと丑之助が倒れていた。

「な……」

突然のことに頭が追いつかないが、ハツが自分のことを庇ったらしい。

「どうして」

音太郎がハツに問うと、ハツは弱々しく微笑み、帯から小刀を取り出した。

「逃げて」

その言葉と同時にハツの首が支えを失ったように落ちる。

音太郎は呆然としていたが、渡された小刀を見ると、目を見開いた。

慌てて、ハツを胸に抱く。

ハツは既に事切れていたが、音太郎は固く彼女を抱きしめた。

​【終】

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