16:00
家に帰ったら、お母さんがおかえりって言った。
お父さんは山へお仕事に、お兄ちゃんはやっぱり山へお使いに、行ってるみたい。
今日も学校楽しかった! たくさん遊んだからお腹すいたな。
16:30
みんな大嫌い、宿題タイム。
お母さんが隣でリンダのことずっと見てるから逃げられない。
友達のケイトが「『腹が減っては戦ができぬ』って言ったらお母さんもおやつくれるよ」って言ってたから試してみたけどダメだった。
ケイトのお母さんはきっと優しいんだろうな。
人間はいいな、かわいいお菓子と優しいお母さん、リンダもほしいな。
お肉は美味しいし食べたいけど、かわいくない。
宿題が半分くらい終わったとき、お兄ちゃんが帰ってきた。なんだか具合悪そう。
リンダに宿題をやっておくこと!って言ってお母さんはお兄ちゃんのお世話をしにいった。
17:00
宿題に飽きちゃったから、ケイトの家に行こう!
お兄ちゃんのお世話をしているお母さんにバレないようにそっと玄関の扉を閉めて……。
家に行ってケイトに遊ぼ!って言ったら、街の広場で遊ぶことになった。
ケイトはお気に入りの羊のぬいぐるみを見せてくれた。
リンダは「かわいい!」って言った。
ケイトは嬉しそうにしてたけど、急に悲しそうになって、言った。
「リンダ、知ってる? 人狼っていう怖くて悪いのがいて、羊さんや牛さんを食べちゃうんだって」
リンダはドキドキしてるのがバレないように「そうなの?」って言った。
ケイトはリンダの手を握った。ケイトの手はあったかくてふわふわしてる。
……ううん、ケイトはお友達だもん。美味しそうなんて絶対ない。ないってば。
「リンダ、気をつけてね。人狼って、人間食べないと死んじゃうんだって。本当だよ」
リンダは「そっか」って言った。怖がってる顔、できてたかな。
ケイトはリンダが人狼だって知らないから、人狼が怖くて悪いって言う。
本当は人狼だって人間と仲良くしたいのに、なんでそう言われちゃうんだろう。
ケイトにうまく笑ってあげられなくて困ってたら、慌ててるみたいなお母さんが来て、
お兄ちゃんの具合が大変だからお家の裏の山に薬草を取りに行ってってお願いされた。
リンダは逃げ出したいのと、お兄ちゃんがすごく心配だったから、裏山に行くことにした。
ケイトは「早く帰って来てね!」って羊のぬいぐるみの手を振った。
17:30
「お前、悪いけど生かしてはおけないな。俺のこと、パパとママにバラすんだろ」
裏山に行ったら、薬草を盗みにきたドロボウを見ちゃった。
時々、裏山から薬草を盗む人間がいるってお父さんが言ってたけど、本当だったんだ……。
ドロボウはリンダにゆっくり近寄ってきて、ナイフを取り出した。
リンダは一生懸命だった。死にたくないって思った。
そしたら……リンダは初めてオオカミになった。
早く動けるようになってナイフを避けて、体が勝手に鋭い爪を振り回した。
気づいたら、ドロボウは大怪我をしてリンダの下敷きになってた。
「ドロボウさん、リンダが人狼だってみんなに言う?」
ドロボウはすごく怖がって、ブンブン首を横に振った。
でも……リンダは今までで一番美味しそうなお肉を食べたくなった。
だって人狼は人間を食べないと死んじゃうんだもん。
お兄ちゃんだって人間を食べれないからあんなに体が弱いんだよね。
それにドロボウは悪い人だから、食べちゃってもいいよね。
いいよね、狩ってもいいよね。
お父さんとお母さんもおいしいお肉、喜んでくれるよね。
──ね?
殺したドロボウの美味しそうなところだけ切り取って、あとは山に埋めた。
あ、でも、お父さんには人間は殺しちゃダメって言われてたんだった。
どうしよう、お父さん、怒ると怖いから、リンダが持ってきたって内緒にしよう。
18:00
バレないように先にお肉だけをおうちの台所に置いておいた。
お母さんもお兄ちゃんも家にいないみたいだから、チャンスだと思って汚れた服を着替えた。
食糧庫にいたのは誰描いたけど、誰だったのかな? まさかまたドロボウじゃないよね?
それから、もう一回裏山に帰って、脱いだ服をドロボウと一緒のところに埋めて、
薬草を持って帰ったらお母さんがキッチンで料理をしてたから渡した。
18:30
お兄ちゃんが寝ているベッドに行って、具合大丈夫?って聞いた。
リンダが行ったとき、お兄ちゃんは何かを枕の下に隠したみたいだけど、なんだろう?
寝ていたらつまんなそうだから、学校の話とかをお兄ちゃんにしてあげた。
お兄ちゃん、すぐゼンソクになっちゃうけど、きっとあの肉を食べれば元気になるよね?
リンダは知ってる。
お兄ちゃんが人狼として狩りをするのが嫌いだってこと。
ほんとは人間みたいに勉強をして物知りになりたいんだってこと。
お兄ちゃん、元気になったらたくさん本読んでね。
そして、リンダたちが我慢しなくてもいい世界を作ってほしいな。
19:00
お家の中にいい匂いがどんどんいっぱいになって、
お家がハレツしちゃうんじゃないかって思ったとき、
お母さんが「ご飯できたよ」って言った。
嗅いだことのないいい匂い。
ゴチソウの匂い。
リンダのお腹がぐうぐうなった。
【目標】
人間を殺したことを隠す。