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16:00

山で仕事をしている夫に水筒を届けるというフィルを見送ってから、

家の雑用をこなしていると、リンダが学校から帰ってきた。

リンダはいつも通り元気ね、若いっていいわ。

まあ、それゆえにやんちゃで無鉄砲で、すぐお腹は空くし、洋服を泥だらけにして帰ってくるしで、困るのだけれど。

ほとんど人間の子みたいに育ってるあの子は、まだ狼になる方法も知らない。

これが正解だったかどうかはわからない……でも、きっとあの子なら人間と仲良く生きていける子になるわ。

 

16:30

リンダの宿題の面倒を見たわ。

「腹が減っては戦ができぬ」なんて覚えたてのことわざでおやつをねだっていたけれど、無視。

宿題が戦だなんて、世の中もっと激しい戦はあるわ(タイムセールとかね)。

そうこうしているうちにフィルが帰って来たけれど、なんだか様子がおかしいみたい。

風邪がぶり返したのかしら……。

鼻風邪をうつしたのが私だってことは内緒だけれど(だってフィル、「母さん、手洗いうがいはちゃんとしてよ!」なんて言って怒るんだもの。まったくもう、可愛くないわ)。ごめんね、フィル。

勉強が苦手なリンダには悪いけれど、宿題は一人でやってもらって、フィルを看病したわ。

フィルったら、具合が悪いのに本を読もうとするから、取り上げて食糧庫の人参の山に埋めてきちゃった。

表紙の色が似ているし、きっと気づかないわよね。

 

17:00

リンダは宿題が終わったみたいで、お友達と遊びに行ったけれど、

そんなにこっそり玄関の扉を閉めて行かなくたっていいじゃない。

やだ、彼氏と会うためにこっそり家を出る思春期の女の子みたい。

……まさか、もう? ちょっと早すぎるわ、お母さん心配!

それから少ししてフィルが喘息の発作を起こした。

これは薬草を採りにいかなきゃだめだわ。

私は家の近くで遊んでいるはずのリンダに家の裏山に薬草を採りに行くように頼むため、フィルの喘息が少し落ち着いている間、家を20分ほど空けた。

リンダには街の広場で会えて、裏山にすぐに向かってくれたわ。

彼氏じゃなくてお友達と遊んでたみたい、ひとまず安心。

羊のぬいぐるみの手を振って、お友達は──名前は忘れたのだけれど──「早く帰ってきてね!」とリンダに声をかけた。

凄いわ、リンダは本当に人間と共存できるかもしれない。

家に帰ると、フィルはちゃんとベッドで休んでいた。いい子ね。

 

17:30

フィルが眠り始めたわ。

汗をかいているようだし、きっと起きた時には喉も乾いているだろうから、

広場の冷たい井戸の水を汲みに行くことにした。

けれど、ばったり出会ったリンダの同級生のお母様の一人に声を掛けられて立ち話しちゃった。

こういうのって断りづらいし、困るわよね……。

たしか、えーっと、ケイトのお母様だったかしら。

ああ、そういえばリンダがさっき一緒にいたのはケイトだったわ。

 

18:00

18:00をだいぶ回ってからようやく家に帰ると、キッチンに美味しそうなお肉の塊があった。

水筒を届けにいくフィルに「夕飯用のお肉を持ってきてちょうだい」って伝言を頼んでおいたから、夫が用意しておいてくれたんだわ。

料理をしていると、リンダが帰ってきて薬草を渡してくれた。

ずいぶん時間がかかったのね……あら?

リンダ、いつの間に着替えたのかしら? 広場で見たときとは違う服を着ているわ。

ああもう、それに泥だらけじゃない。今日は洗濯物が二倍だわ。

 

18:30

見てわかる……これはいいお肉ね。

何かお祝いすることがあった覚えはないけれど、いいお肉が食べれるならなんでもいっか。

そんなことを考えながらスープを作っていると、夫が帰ってきた。

なぜか通らなくてもいい裏山を通って帰ってきたみたい。

どうしたのかしら、薬草が必要だったなら言ってくれればリンダについでに採ってきてもらったのに。

具合が悪いのかしら……そういえば、持ってきてもらったお肉も切り方がとても雑だったわ。

いつもの彼ならこんな切り方はしないはずなのだけれど。

 

19:00

さて、と! スープができたわ。

フィルのベッドにいるらしい兄妹に声をかけるとすぐに二人は部屋から出てきた。

夫は……帰ってきてからずっと食卓に座っている。

はいはい、あなたがそうするときはわかってるわ……お腹がすいたのね?

 

【目標】

犯人に投票する。

鼻風邪をひいていることを隠す。

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